第12章 The beginning of the story3
「ねえ…潤、どういうことなの?」
「翔子…落ち着いて…」
多分、翔子もなにか予感があったんだろう。
必死になって俺にしがみついてくる。
「どうしてはっきり赤ちゃんのこと教えてくれないの?ねえ…」
「翔子…お願いだから、座ろう?」
「潤っ…誤魔化さないでっ…」
リビングのソファになんとか座らせると、肩を抱いた。
とても顔を見て喋れる自信がなかった。
「翔子…落ち着いて聞いて」
「潤…」
「夕ちゃんは…死んだよ」
夕ちゃんは小さな箱に入って帰ってきた。
本当に殺された。
障害があるからと。
その血は絶やさなければならないと。
国に殺された
今、そこにいる。
俺達のベッドのある部屋に…夕ちゃんは眠ってるんだ。
「……な、んで……」
ガタガタと翔子の身体が震え始めた。
「なんで…夕ちゃんは死んだの…?」
「翔子…」
「私が…私がちゃんと産んであげられなかったの?ねえ…潤…」
「わからない…」
ふらりと立ち上がると寝室のドアを開けた。
そこに設えた簡易の祭壇に、夕ちゃんの骨が置いてある。
翔子はその前に座ったまま動かなかった。
そうして、そのままとうとう3日間眠らなかった。