• テキストサイズ

SHELTER【気象系BL小説】

第12章 The beginning of the story3


命綱


やっと手に入った。

できたてのパスポートを親に見せたら、仕方ないとため息を付いた。

この国では、俺は暮らせない。

「ごめんね…ちゃんと産んであげられなくて…」

かあさん、違う。
それは違う。

誰のせいでもない。
俺がこうなったのは…

「あちらにはもう話がついているから、すぐにでも出国しなさい」

とうさん、ありがとう。



「何言ってるの…?雅紀…」
「ごめん…いつか言わなきゃって思ってたんだけど…」

あの日、初めて自分の性癖を親に告白した。
なぜなら、状況は差し迫っていたから。

「学校の先生に…バレたみたいなんだ…」
「えっ…」

とうさんが黙り込んだ。
かあさんははらはらと涙を流しながら遠い目をした。

キッチンの椅子から降りると、床に手をついた。

「ごめんなさい…」
「雅紀…やめなさい」

とうさんは立ち上がって俺を立ち上がらせた。

「とうさん…俺、アメリカに行きたい…」

我慢していたのに、涙がこぼれ落ちてきた。

「雅紀…」
「ごめんなさいっ…ごめんなさいっ…普通の息子になれなくて…」
「雅紀っ…」
「ごめんなさいっ…」

謝るしかなかった。

こんな性癖を抱えてしまったことを。


そして恨むしかなかった。

こんな国に生まれてしまったことを。

/ 483ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp