第11章 The beginning of the story2
こんなこと言っても、こいつにはまだ日本語が通じない。
俺は諦めてクリーンルームを出た。
「長野博士…こちらのデータに目を通してください」
「わかった」
白衣に袖を通すと、通常業務に戻る。
思うようなデータは出てこない。
あれ以来、成功体になりそうな胎芽ができていなかった。
なぜニノだけが成功したのか…
誰も答えを持っていなかった。
そしてその答えは、その後いつまで経っても得られないとは、この時の俺は思っても見なかった。
そう…思ってもみなかった。
独房から見える朝日は、いつも白く透明だった。
あの頃のことを思い出すのが、一番楽しい。
また、今日も眠れなかった。
ここに収監されて何日だろう。
まだ取り調べは続いている。
…死体から臓器を取り出したのがなんだというんだろう…
自殺したやつの身体を有効利用しただけじゃないか。
自分から死ぬなんて、マヌケなやつの身体を使ってやったのに。
なにがいけないと言うんだ。
坂本社長は、理由なんて後からつければいいって言っていたのに、俺がやってもいないクローンと人間間の臓器移植まで俺のせいにした。
そんなこと知らないから、いくら調べられたって答えようがないのに…
誰も俺の話なんて聞こうとしないんだ。
なんで俺がこんな目に遭うんだ。
俺が何をしたと言うんだ。
俺は人類の希望の星を生み出したんだぞ。
俺は…俺は…
「神なんだぞ…」
ニノ、早く助けに来いよ。
B地区なんてお前の生きる場所じゃない。
お前を生み出した俺がこんなところでこんな目にあってるのに…お前は何をしてるんだ。
あんなことさせたの、まだ怒ってるのか?
しょうがないだろう…お前はホムンクルスなんだから。
人間じゃないんだから―――
「はは…ははは…はは…」
本当はわかってた
あいつは人間で
誰よりも人間らしかった
そんなあいつを…俺は…
「ニノぉ…会いに来てくれよぉ…」
誰よりも、おまえは美しかった
【The beginning of the story2 END】