第9章 HEAVEN
あれから5年の歳月が流れた。
ニノの命の灯火は、切れることなく灯り続けている。
むしろ、元気すぎる。
それもそうか…俺達は三十代も後半になってきたけど、こいつはまだ二十歳。
やっと身体が大人になったんだ。
元気にも程がある。
だからこそ…皆、ついていってるんだろうけど…
「ねえ、雅紀…変じゃない?」
さっきから、初めて着るスーツに違和感しかないらしい。
「大丈夫だって…翔の見立てだよ?」
「だから信用ならないんじゃん…」
「どういう意味だ」
「あっ…」
俺の部屋の戸に凭れて、これまたスーツ姿の翔が立っていた。
「なっ、なんでもないよ?」
「俺のセンスを疑っているのか」
「い、いやだなあ…そんなことないって…」
ギャーギャー言ってるのを尻目に、ニノの持ち物を点検して、さっさとボストンバッグに詰める。
「さ…これで大丈夫でしょ…」
「あ、ごめん雅紀」
「頑張っておいで」
「…うん…」
そっと抱きしめると、ちょっとスーツがゴワゴワした。
「準備できたかー?」
智が駆け込んできて、ニノを見る。
「おお…馬子にも衣装!」
「あーっ!智、よくそんな言葉知ってるね!」
「この前ニノが教えてくれたじゃん!」
「そうだっけ?」