第1章 Area B
「潤や智は違う理由だけど、でもね、ここは男しか居ないから…恋愛するとなるとね…自然とそうなっちゃってね…」
「えっ…」
そういえば、B地区は”繁殖”を防ぐため男と女は別々に収容されていると聞いた。
そうなると、そうなるってことなんだ…
「潤や智と付き合ってるの?」
「ん…そうだね…そうなるかな…」
「そっか…」
「でもね、俺達はなんの約束もしてないし、決め事もしてない」
「え?」
「明日どうなるかなんて、B地区じゃわからないから…一緒に居られる時に、一緒に居ないとね…」
意味がわからなかった。
どうなるかわからないって…どういうことなんだろう。
「さ、こんな話はおしまい。お腹減ったでしょ?」
「うん」
「じゃ、行こうか」
そう言って雅紀は立ちあがって手を差し出した。
俺は素直にその手をぎゅっと握った。
雅紀は笑うと、俺を引き起こしてくれた。
繋いだ手は離さなかった。
だって、温かかったから…
熱帯性気候の日本は、一年中暖かい。
流石に冬になると少し寒いけど、ほとんど半袖で過ごせるほどだ。
昔は雪が降っていたというけど、本当だろうか。
クラブをやっているという校舎に向かう途中、真っ黒なチョウチョが舞っていた。
A地区でもよく見る蝶だけど、ここでみたらエキゾチックに見えた。
あんなところに行きたくなかったら…
低い声が頭に蘇った。
【Area B END】