【おそ松さん宗教松】セーチクダイ・スロラーニュ 《前編》
第4章 僕に兄など、おりません
コップは割れ、ミルクが零れおち、トレイには汚れがたまっている。
初めて、神父に反抗した。
…初めて、自分の力で何かが出来た。
人に言われて言われた通りに動くからくり人形のような僕じゃなくて、
自分で決めて、自分でしたい事が出来た。
自由ってこんなに楽しいんだ。
「一……松…?」
死んだ魚のように目を見開き、溢れたホットミルクを見つめる。
───誰も、僕を見てくれない。
「……っ、あれ…?」
その瞬間、何かが抜けたように我に還った。すかさず自分のしてしまったことに気付き、コップを片付け始める。
「すっ…すいません、神父、僕…なんてことを!」
本当に何しているんだろう。
神父に反抗したりなんかして。きっと神様に見捨てられる。神父にも見捨てられる。
…どうしよう。
割れたコップと溢れたミルクを片付けていると、カラ松神父がそっと僕の頭に触れた。