【おそ松さん宗教松】セーチクダイ・スロラーニュ 《前編》
第1章 出来損ないの、シスターさん
黒い黒い、夢の中。
あ…僕、寝ちゃったんだ。
意識がはっきりしてる。
まるで、黒い世界に閉じ込められたかのような……
『こんばんわぁ~』
案の定声がした。
慣れてしまったその声に驚くこともなくこちらを振り返る。
「こんばんは」
自分と同じ顔をした悪鬼。
だけどそのニタリと亀裂が上がる笑みは、名の通り、“悪魔”そのもの。
「…なんのよう?いい加減、アンタに会うのも飽きた。」
『いや~その冷たい視線が堪らないね!俺はただ可愛い一松ちゃんに会いに来たんだよ?』
精神を抉るかのように僕の身体を背中から包み込む。
『ねぇねぇ、一松くんそろそろ俺と契約してくんない?』
「…ウザい、離れろ悪魔。」
鋭い赤い爪から絡められる十字架のペンダント。
僕がいつも首から下げている木製の十字架を、悪魔は愛おしそうに撫でていた。
『だーかーらー!離れられないんだって!一松くんが俺から離れてくれないんだしさ。“コレ”、割ってくれれば離れるんだけど。』
ダメだ。この十字架だけは手放してはならない。
だって……
「これはカラ松神父の、大事なプレゼントだから。」
『…まだアイツのこと、神父なんて呼んでんだ。あんな人間のこと……』