第1章 文化祭
「桜っち?」
急に黙りこくった桜を、黄瀬は心配そうに覗き込んだ。
「あの・・・舞台の代役頼まれちゃって・・・」
「代役?!」
3人は同時に声を上げた。
「舞台って、さっきチラシみた、あの?!」
高尾が驚きの声を上げる。
「大丈夫なんすか?そんな急に。桜っち演劇部じゃないんすよね?」
黄瀬は心配そうに言った。
「やるだけやってみる・・・だから、今から準備しなくちゃいけないから・・・」
一緒に校内を回れなくなったことに申し訳ないという顔をしながら緑間を見上げた。
すると緑間は、桜の頭に手を置いた。
「桜なら大丈夫なのだよ。人事を尽くすのだよ」
そう言って励ましてくれた。
すると突然桜は緑間に抱きつくと、背中にきつく腕を回した。
驚いた緑間だが、ふっと笑うと桜を抱きしめ返した。
しばらくして、ぱっと離れた時にはいつもの笑顔に戻っていた。
「よし!がんばってくる!!行って来ます!!」
と、ドアに手をかけた瞬間、
「その前に一通メール!」
大きな独り言を言うと、手早く本文を打ち込む。
なぜかそのメールを緑間に見せていたずらっぽい笑顔を見せると、
今度こそ保健室を駆け出していった。