第34章 舞い降りた天使と九人の騎士
「桜ちーん、これも美味しいからあげるー」
火神の行動に視線が集まる中、紫原が桜に声をかける。
手にしている竹串にはマシュマロにチョコレートがかかっている。
「えーっと…」
「ほら、早くー」
無表情の紫原は、桜の口元にマシュマロを差し出す。
「あ、敦…?」
「…じゃあ」
桜は困惑しながらも、マシュマロを口に頬張った。
「ねー美味しいでしょー?」
「う、うん…」
「次、取りに行ってこよーっと」
紫原もまた、席から立ち上がるとデザートコーナーに一直線。
「敦がお菓子を分けてくれるなんて、珍しいな」
一同は紫原に視線を送る。
「どうしたッスかね、紫原っち」
「そんな珍しいのか?」
「珍しいと思います」
高尾の言葉に、黒子が答える。
「どうする?緑間」
「何がなのだよ」
不敵な笑みで問いかける赤司を睨みつける緑間。
「まさか敦も…」
背中を向けた紫原の口元が、笑みを浮かべていたのを数人は見逃さなかった。