第34章 舞い降りた天使と九人の騎士
桜が脱衣所を出ると、外を眺める赤司の姿があった。
視線の先には、ゲレンデに灯された光が点々としている。
「赤司君、先に上がってたんだ」
「桜…よく分かったね。先に上がったと」
「露天風呂から賑やかな声が聞こえてきましたから」
困ったように笑うと、赤司の隣に歩み寄る。
「夜のゲレンデって、何だか幻想的ですね」
ゲレンデを眺める桜の横顔をじっと見つめる赤司。
「京都で見た景色に似てて、キレイ…」
「…桜…」
「何?」
名前を呼ばれ、赤司に視線を移す桜。
「桜…」
切なくも熱のある赤司の瞳に捕らわれる桜。
「赤司…君…?」
赤司は、桜の頬にそっと手を伸ばす。
あと少しで触れそうな時、脱衣所から賑やかな声が聞こえて来た。
「真太郎!」
姿を見つけた桜は、うれしそうに駆け寄る。
「露天風呂から声聞こえてたよ。楽しそうでうらやましかった」
無邪気に笑いかける桜に笑顔を向けるが、すぐに鋭い視線を赤司に向ける緑間。
「残念」
赤司は不敵に笑うと、そう呟いた。