第34章 舞い降りた天使と九人の騎士
夕方になり、宿に入った一同は大浴場に向かった。
「桜ちゃん、滑れるようになった?」
氷室がそっと問いかける。
「はい。少し出来るようになりました」
「そっか、よかったね」
「でも、すぐ転んじゃって…しかも前方に」
桜が胸元を撫でながら泣きそうな顔をする。
「初心者にはよくあることだよ。慣れるまでは仕方ないね」
「はい…」
肩を落とす桜を、優しく見つめる氷室。
「あまり無理はするなよ。怪我をしたら大変なのだよ」
緑間が傍らから声をかける。
「気をつけます…でも、転んでも楽しいよ」
笑顔を向ける桜に、薄く笑う緑間。
「ほどほどにするのだよ」
「はーい」
「あー!桜っち!家族風呂があるッスよ!」
笑い合う二人に、黄瀬が駆け寄り満面の笑みを見せる。