第33章 雪の魔法
緑間は湯船に浸かり、空を見上げていた。
眼鏡を外した視力では、せっかくの景色もぼやけて見える。
「眼鏡、してくればよかったか…」
目を閉じて呟くと、人の気配に視線を向ける。
「…桜?」
「やっぱり、一緒に入ろうかな…」
ぼんやりとした人影に、桜の一言で少し驚く緑間。
「ならば早く入るのだよ。寒いだろう」
「…うん」
ゆっくりと湯船に身を沈めると、緑間と距離を取る桜。
「なぜそんなに離れるのだよ」
呆れたと笑う緑間。
「せ、せっかくだから、手足伸ばそうかなーって」
より赤くなった顔で、誤魔化すように手足をバタつかせる桜。
「今更何を照れているのだよ」
そう言うと緑間は立ち上がり、桜の隣に移動する。