第33章 雪の魔法
車は次第に山道へと入っていく。
市街に比べ、雪深くなる景色。
細い道に建物が数件見え始めると、ようやく車が止まった。
運転手が降りると、後部座席の扉を開ける。
「雪で滑りますので、足元お気をつけください」
そう言うと白い手袋で桜に手を差し出す。
「ありがとうございます」
桜はその手を取り車を降りる。
「俺の役を取らないでくれるかな」
反対側から降りた赤司が、運転手の傍らで困ったように笑ってみせる。
「いえ、そんなつもりは」
運転手は一歩下がり頭を下げる。
「君が謝る必要はないよ」
赤司が笑いかけると、再び桜に手を差し出す。
「ここは雪も積もっている。是非、手を取ってもらいたいのだが」
優しく笑いかける赤司に、頬を染める桜。
すると、緑間が桜の頭をぽんぽんと撫でる。
それが合図かのように、そっと手を伸ばし赤司の手を取る桜。
うつむき緊張気味の桜を見て、薄く笑う赤司。
「ゆっくり歩こう。階段だから、気をつけて」
赤司は桜の手を引き、歩き始める。
その後ろから、複雑な心境で着いて行く緑間だった。