第33章 雪の魔法
宿に着いた桜は、部屋に通され呆然としていた。
広い畳の部屋に洋室のベッドルーム、檜の内風呂に加え露天風呂まで備わっていた。
「本当に、この部屋で合ってる…?」
遠慮がちに部屋を見回し、恐る恐る緑間に声をかける。
「合っているのだよ」
窓際のソファーに腰掛けた緑間は、呆れたようにため息をつく。
「まったく、グリーン車といい、この部屋といい…」
「本当に、私達が来ちゃって良かったのかな…」
桜は緑間の隣にそっと腰を降ろす。
「気にすること無いのだよ。母さんも笑っていただろう」
「…うん…」
「それより、せっかくの露天風呂だ。一緒に入るか?」
うつむく桜の肩を抱き寄せる緑間。
「な、何言ってるの…」
瞬時に顔を赤くして、緑間を押しのける桜。
「わ、私は大浴場に行くから…」
早口にそう言うと、着替えやタオルを手にする。
「ほら…真太郎も準備して」
赤い顔を隠すように、緑間に背を向けて話す桜。
「…残念なのだよ」
小さく呟くと、着替えを手にして二人で部屋を後にした。