第33章 雪の魔法
それから二日後の早朝、二人は東京駅の新幹線ホームにいた。
「おはよう、真太郎」
「おはようなのだよ」
顔を見合わせた二人は、照れくさそうに笑い合う。
「何か、緊張するね」
視線を逸らしてうつむく桜を見て、薄く笑う緑間。
「桜、目の下にクマが出来ているのだよ」
「え?!嘘、やだ!」
慌てて緑間に背を向け手鏡を覗き込む桜。
そんな桜を見て、笑いをこらえる緑間。
「…真太郎ー…」
桜は頬を膨らめ緑間を睨みつける。
「冗談なのだよ。そんなに眠れなかったのか?」
「真太郎の意地悪」
「悪かった。ほら、荷物を持ってやるのだよ」
再び背を向ける桜から荷物を手にする緑間。
「俺達の乗る車両はこっちなのだよ」
歩き出す緑間を不満そうに見つめると、小走りに駆け寄る桜。
「まったく、随分と豪華な旅行なのだよ」
呟く緑間をじっと見つめる桜。
「なら、新婚旅行はもっと期待しても良いのかな?」
桜の言葉に反射的に振り向く緑間。
そんな緑間を見て、意地悪そうに笑う桜。
「言うようになったな」
残念そうに肩を落とす緑間だが、桜はふいに照れくさそうに笑ってみせる。
「桜は今のままで良いのだよ」
緑間は薄く笑うと、桜の頭をひと撫でした。