第33章 雪の魔法
「な、何なのだよ」
体を逸らし怪訝な顔をする緑間。
「まぁ…整ってはいるけど、表情筋が硬いのよねー」
手を伸ばして緑間の頬を摘み上げる。
「やめるのだよ…」
うっとおしそうに、母親の手を払いのける。
「でも、時々笑ってくれるよね」
「へぇー」
桜の言葉に、驚く母親。
「真太郎がねぇ…桜ちゃんの前ではデレデレなのね」
「そんなことないのだよ」
機嫌悪そうに言い放つと、ソファーから立ち上がる緑間。
「まったく、ここにいるとろくなことがないのだよ」
桜の手を取り、部屋から出ようとする緑間。
「あー、ちょっと待ちなさい。桜ちゃんを誘ったのは用事もあったのよ」
母親の言葉に、浮かせた腰を下ろす桜。
「用事、ですか?」
ソファーを立った母親は、引き出しから封筒を手に戻って来る。