第32章 雪をも解かす真冬の華よ、いつか僕に手折らせて
「ほぉ…」
「で、でも!あの試合、立ってられないくらいフラフラで、大変だったし…」
「まぁいいが、陽泉の氷室にはキスをされていたな」
その一言で桜は顔を赤くする。
「頬っぺただし!それになんで知ってるの?!」
桜は思わず腰を浮かせた。
「離れてはいたが、見えたのだよ」
「だったら助けてくれればいいのに!」
「主将と話していたから、無理だったのだよ」
視線を逸らす緑間を、睨みつける桜。
「氷室さんは帰国子女らしくて、あいさつみたいなものだよ」
拗ねた口調で話す桜。
「だからって、油断しすぎなのだよ」
冷たく言い放つ緑間の言葉に、表情を曇らせる桜。
「真太郎は、助けてくれないんだね…」
呟く桜。
「結局、先に来たのは火神君だし…灰崎って人に絡まれた時も、氷室さんと火神君、黄瀬君が助けてくれたよ」
「灰崎に絡まれたのか?!怪我は?何をされたのだよ!」
慌てた様子で桜の両肩を掴み、顔を覗き込む緑間。
緑間の真剣な瞳に、当時を思い出し涙を滲ませる桜。
「…え、襟首、掴まれて苦しかったし…投げられたり…」
体を震わせ、涙を堪える桜を強く抱きしめる緑間。