第32章 雪をも解かす真冬の華よ、いつか僕に手折らせて
ようやく帰路に着く一同。
名残惜しそうに桜から離れ、残ったのは緑間と黒子、高尾だった。
電車内で、親しそうに話す黒子と高尾の傍ら、緑間と桜は黙りこくっていた。
いくつかの駅が過ぎ、電車が止まると桜は一人先に降りた。
残りの三人に手を振っていると、ドアが閉まる寸前、黒子と高尾が緑間の背中を突き飛ばすように押した。
「なーにやってんだよ真ちゃん!」
「夜道を一人で歩かせるつもりですか」
「お前ら、何を…!」
緑間の反論も空しくドアが閉まり動き出す電車。
黒子と高尾は、桜に向けて手を振っていた。
「あいつら…何を考えているのだよ」
「あの…私、大丈夫だから…」
イラついた様子の緑間に、桜がそっと声をかける。
「…いや、家まで送るのだよ」
「真太郎…」
いつもの雰囲気を取り戻した緑間に安心する桜。
「ついでに、聞きたいことが山ほどあるのだよ」
しかし、低く呟いた言葉と冷たい瞳で、桜は背筋が凍る思いをした。