第32章 雪をも解かす真冬の華よ、いつか僕に手折らせて
居心地の悪い空気の中で、桜は黒子の背後に隠れるようにしていた。
そこに姿を見せた緑間に気付いた赤司が声をかける。
「緑間!」
視線を巡らせた緑間は桜の姿を見て、一瞬躊躇いつつも足を向けた。
緑間をちらりと見る桜だが、視線を逸らされ表情を曇らせる。
「丁度良かった。緑間にも謝ろうと思っていたんだ」
その言葉を聞いて驚きを隠せない緑間。
「相原さんも、今回は本当に申し訳なかった」
黒子の背後を覗き込むように、桜に声をかける赤司。
しかし、桜は赤司から逃れるように背を向ける。
「桜さん、大丈夫ですよ。今の赤司君が、本来の赤司君ですから」
桜に優しく話しかける黒子。
「…本来の…?」
「簡単に言うと…人格が二人いた…という感じでしょうか」
黒子は、赤司に問うように口を開く。