第32章 雪をも解かす真冬の華よ、いつか僕に手折らせて
赤司の変化を感じ取った火神は、己を奮い立たせる。
火神をかわした先に立った黒子を前に、薄く笑う赤司。
「久しぶりだね、黒子」
その赤司に、驚きを隠せない黒子。
動きやパスを見て、黒子同様、キセキの世代は確信する、
「本来の赤司君が目を覚ましたことで、前より遥かに手強くなったのは間違いありません」
赤司の正確なパスを受けて、本来以上の力を発揮する洛山。
五人全員がゾーンに入っているも同然。
手も足も出なくなった誠凜は、選手の体力も限界に来ていた。
あまりに差がありすぎる。
選手、ベンチ共にここまでかとよぎった瞬間、声援が響いた。
「がんばれ黒子ー!あきらめるなー!」
その声の先には、黒子の友人の姿。
中学時代に戦った、戦友。
その声をきっかけに立ち上がる青峰。
「おらテツ!火神!洛山くらい倒さねーとぶっ殺すぞ!」
それに便乗する黄瀬。
「言っとくけどうちもッスからね!勝て!誠凜!」
「倒して来い!赤司を!洛山を!」
緑間も声を張る。
「敦はいいのかい?」
「やるわけねーし」
氷室が声をかけるも、視線を逸らす紫原。
かつての仲間、好敵手からの声援に続き、会場中から声が沸きあがる。
それに後押しされ、力を取り戻す誠凜。
そして火神が、ゾーンを超えたゾーンの扉に手をかけた瞬間だった。