第32章 雪をも解かす真冬の華よ、いつか僕に手折らせて
残り約五分で、洛山がタイムアウトを取った。
ベンチに座り沈黙する赤司は、自問自答する。
僕は誰だ…。
お前は俺の弱さだ…と、心のどこかで誰かが答える。
勝つことで繋ぎとめていたかけがえのないもの。
勝つ以外の方法を知らなかった自分が、敗北への焦りからもう一人の自分を生み出した。
そう、それが今の僕だ…。
その弱い自分が、再び敗北を前に揺らぎ始めた。
もう一人の自分が問いかける。
勝つことのみを求め、それ以外を切り捨ててきた俺たちの罪は決して消えない。
敗北するならそれもいいと思った。
だが、黒子を前に、勝ちたい衝動が抑えきれない。
「…誰だ、お前…」
雰囲気の変わった赤司に、問いかける黛。
「誰とは心外だな…俺は赤司征十郎に決まっているだろう」
本来の赤司が、目を覚ました。