第32章 雪をも解かす真冬の華よ、いつか僕に手折らせて
「桜が心を許したら、どんな表情をするのだろう」
桜の頬に触れ、距離をつめる赤司。
瞳が逸らせず、思わず目を瞑る桜。
すると、赤司がくすりと笑う声がした。
「やはり、冷え切ってしまっている」
頬に触れた赤司の手が、温かく感じる。
「風呂で温まるといい。風邪でもひかれたら面倒だ」
そう言うと桜から離れ、隣室の扉に手をかける。
「せっかくの状況だが、明日があるからね」
不敵に笑う赤司。
「部屋は好きに使うといい。何かあれば遠慮なくフロントに言え」
隣室に入り、しばらくして聞こえてくるシャワーの音。
「怖いけど、優しい感じもして…不思議な人だな…」
桜は呟くと窓辺から空を見上げる。
都会の雑音と、濁った空に星は見えない。
「…真太郎…会いたいよ…」
桜はその場にうずくまった。