第1章 文化祭
「代役って・・・演劇部の誰かに頼んだほうが・・・」
「相原さん、いつも俺の練習に付き合ってくれただろ?
今から部員の誰かがセリフ覚えるより、適任だと思ったんだよ」
洋介が口を開いた。
「練習って・・・ちょっとふざけてやってみただけだよ。それにあれって主役・・・」
文化祭の準備期間になって、連日遅くまで残っていた時遊び半分で洋介の演劇練習に付き合っていた。
洋介の役は王子役なので、桜が演じたのは当然ヒロインである主役級だ。
「む、無理無理!!」
「そうでしょうか・・・」
突然、黒子が割って入った。
「黒子?!いつからそこに・・・!!」
洋介は驚きの声を上げた。
「最初からいました。それよりお2人の練習見てましたけど、桜さん、代役いけると思います」
「く、黒子君??」
黒子の言葉を聞いて、洋介と鞠菜、部長の瞳が輝く。
「な、何を言い出すの黒子君!!変なこと言うのやめて」
半泣きで黒子の肩を揺する桜。
「開演まで2時間あるから、やるだけやってみてくれないか」
期待を込めた目で見てくる洋介。
「どうしてもダメそうなら、中止を発表するから。頼む!
部員全員でがんばってきたんだよ・・・」
この一言を言われてしまったら、断れ切れない。
「お願い桜ちゃん!」
もし、中止になるとしても時間ギリギリまでやってみるしかない。
桜は覚悟を決めて大きく深呼吸をした。