第32章 雪をも解かす真冬の華よ、いつか僕に手折らせて
会場入り口付近で待っていると、一人の男の子が近づいて来た。
緑間は鋭い視線を向ける一方、男の子は薄っすらと笑みを浮かべていた。
無言で手を差し出す緑間に携帯を渡そうとした瞬間、背後の桜に気付きその手を止めた。
「君は…確かあの時…」
「あ…」
緑間の背後から顔を出した桜は、男の子の顔を見て驚きの声を上げた。
「桜?!赤司と面識があったのか?!」
桜の反応で、逆に驚く緑間。
「えっと…開会式の日に、ぶつかっちゃって…」
緑間に説明しつつも、赤司と呼ばれた男の子に頭を下げる桜。
「あの時は本当にすみませんでした。携帯も拾ってもらって…」
赤司は桜を凝視すると、ふっと笑った。