第19章 記憶のカケラ
ようやく秀徳高校にたどり着いた時には、全身ずぶ濡れになっていた。
桜はそのまま体育館に走り、扉を開けた。
それに気付いた高尾が振り返り声をかけた。
「あっれー?桜ちゃん!って、ずぶ濡れじゃねーか!」
「あ、あの…緑間君は…?」
崩れ落ちるように床に膝をつき、息切れしながら言葉を発する桜。
「ど、どうしたんだよ急に。それより体拭いた方が…!」
「大丈夫、だから…それより、緑間君は…!」
懇願するように顔を上げる桜。
濡れた服や髪がが体に張り付き、艶めいて見える。
「…だいぶ前に帰ったぜ?」
「そ、そう…ありがとう…高尾君…」
その言葉を聞くと、桜は再び立ち上がり体育館を後にした。
「お、おう…」
疾風のように去っていく桜を、高尾は呆然と見送った。