第19章 記憶のカケラ
「そう…あの日…早く二人のところに、戻れって…」
嗚咽で途切れ途切れに話す桜の頭にそっと手を乗せる黒子。
「桜さん。緑間君がそう簡単に桜さんを手放すとは思えません」
その言葉に、桜はゆっくりと顔を上げた。
涙でぐしゃぐしゃになった桜の顔を見て、黒子はくすっと笑う。
「あの時緑間君は、桜さんが僕達と合流するのを見届けたんですよ。
きっと、心配で仕方なかったんです」
「…緑間君が…?」
「そうです。今の自分では、桜さんを脅えさせるだけだと言って、
距離を取っていただけです。だから、早く行ってあげてください。きっと喜びますよ」
「…ほん…とう…?」
その言葉を聞いて、桜はさらに大粒の涙をこぼした。