第19章 記憶のカケラ
「顔色も悪かったが、少し痩せたように見えたのだよ…」
うつむいたまま、囁くように話す緑間。
「…そうですか?毎日会っていると気付かないかもしれませんが、
最近、食欲が無いと言っていました」
「…そうか…」
そう言うと緑間は、ゆっくり立ち上がる。
「黒子…桜を、頼むのだよ…」
「え?傍にいてあげないんですか?」
「今の俺では、あいつを脅えさせるだけなのだよ」
黒子に背を向けたまま、笑い混じりな声で呟く緑間。
「緑間君…」
緑間はそのまま、エレベーターホールに姿を消した。
「誰ですか…か。お前の一言がこんなにも心をえぐるとはな…」
拳を握り締め、力なく呟いた。