第2章 初デート
「え?!あの…」
「桜?どうしたのだよそんなに慌てて…」
携帯の向こう側から聞こえてきた声は緑間だった。
「あ…緑間君?ごめん…ちょっとビックリしちゃった」
「何かあったのか?」
「今ね、緑間君に電話しようかなって迷ってたの。そしたら本人からかかってくるから、つい」
心配そうな声の緑間をよそに、桜はクスクスと笑いながら話した。
「…そ、そうか…それなら良かったのだよ」
緑間の声も、心なしかうれしそうに変わる。
「電話で話すの初めてだよね。うれしいな」
桜は、近くにあったクッションを抱きしめながら声を弾ませた。
「よ、用事があっただけなのだよ!」
「そうなの?いつもメールで済ませるのにー。私は緑間君の声が聞けてうれしいよ」
明らかに照れているだけだと分かる緑間の言い訳に、桜はちょっと意地悪に言う。
「…声だけでいいのか?」
「え?」
桜の可愛い意地悪に、緑間も負けじと対抗する。
「俺は桜に会いたいのだよ」
その瞬間、桜の鼓動は跳ね上がる。耳から伝わる緑間の声で、全身が熱くなる。
ちょっとした意地悪が、倍返しされてしまった。