第1章 文化祭
「あ、本当にメイド服着てる」
桜は笑いをこらえて口元を押さえた。
「・・・桜が指示をだしたのだろう」
呆れた顔の緑間。
店内には、女子生徒に交じってメイド服で接客をする黒子の姿があった。
数時間前、保健室で打った一通のメール。
『舞台の代役やることになったの。午後の接客は黒子君にメイド服着せてやらせてね!』
黒子の一言で代役をやるはめになった、桜からの仕返しのつもりだったのだ。
「あの姿にもビックリだけどよ、何か人気みてーだぜ?」
そう言って高尾は再びクスクスと笑った。
「消えるメイド、って言われてるみたいっすよ」
黄瀬もつられて笑っていた。
言われてみれば、店内から出てくる男性客が口々に言っていた。
ー可愛いのに、声をかけようとするといなくなってるー と。
「黒子君、女の子に間違われてるってこと?それに、
お客相手にミスディレクションて・・・」
桜がそう言うと、4人は吹き出して笑った。