第1章 文化祭
開演を知らせるアナウンスの後、幕が上がる。
舞台は中世のヨーロッパ。
身分を隠して舞踏会に参加していたお姫様に一目惚れした王子様。
甘いマスクと声、なのにちょっと不器用。
そんな王子様との一夜の思い出。
衣装係り渾身の作であるきらびやかなドレスの数々、本物と見間違えるほどのセットで繰り広げられる
舞踏会のシーン。曲に合わせてステップを踏む。
慣れないドレスにつまづきそうになった桜だが、洋介が抱きとめ笑顔でかわす。
「大丈夫ですか、姫」
舞踏会のシーンが終わり、王子とお姫様、それぞれの日常に切り替わる。
1つの見せ場ともいえる、それぞれ単独でのシーンがある。
会えない相手への思いのたけを語る。
王子の語りが終わり、お姫様が登場する。
ピンスポットを浴び、物憂げな表情のお姫様。
胸の前で両手を握り締め、会場を見つめ語りだす。
「あの夜、身分を隠した私に優しく接してくださったあなたのことが・・・
日に日に思いが募り胸が苦しいのです・・・。
もう2度と会えないと分かっていても、私はあなたをお慕いしています・・・」
そう言って会場に向かって手を伸ばす。
艶っぽい表情に客席がざわめく。