第1章 文化祭
限られた時間内で、桜は精一杯がんばった。
ヒロインを自分に重ねて感情移入していたせいか、セリフ回しに奥行きが出ていた。
それを見ていた部員たちは、つい桜に引き込まれてしまいそうだった。
「なんかすごいね・・・代役とは思えないよ・・・」
「あの切ない表情とか、すごくきれい」
開演30分前。
部員の反対も無く、部長は開演を決めた。
役者変更のアナウンスが校内に流れる。
桜は衣装に袖を通し、軽くサイズ直しをしてもらった。
体育館には次第に人が集まり始めていた。
桜が代役ということで見に来たという人もいるようだった。
舞台の袖からそっと客席を覗くと、すでに満員状態だった。
桜の姿に気づいた黄瀬が手を振っていた。
もちろん、緑間に高尾、近くには日向やリコ、バスケ部員の姿があった。
開演まであと10分。
桜は深呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着かせた。