第7章 貴方の一番になりたい
「さちちゃん、今日かーわいい!そのネイルすっごい似合ってる!」
ピンク色が良く似合う男の子、彼が好きなのはおしゃれな子。
今日も女友達と楽しそうに歩いてる貴方を数歩下がって、その背を見つめる。
「でしょー?!トッティってさ、そういうとこすぐ気づいてくれるから嬉しい!」
ひらりオシャレなスカートを靡かせ、さちちゃんは綺麗に笑う。
...羨ましい。
ふと横をみれば、無難な服を着て染めてもいない黒髪がゆらり、オシャレな服のかかったショーウィンドウに映り込む。
はあっとため息を一つこぼし、視線をそらせばズレる眼鏡。
そろそろネジが緩いのか、買い替え時だろうか?
かちゃりと眼鏡をかけ直し、下をみればオレンジの石畳にそえられたイチョウの葉がなんともいえずいい雰囲気。
道までオシャレだからたまらない。
「透ちゃ〜ん!置いてくよ?」
「あ、うん」
大きめなバッグを揺らして、その声とともに走り出す。
それを確認した女友達たちとピンク色の愛しい人は、背を向けて歩き出す。
ぴったり三歩、それが私と彼の距離。
その距離が一番心地いい。
ぎゅっと大きなカバンを握りしめて、後をついていく。
「そういえばさ、黒髪女子ってどう思う?やっぱり日本人はさ?黒髪の方がーってこないだロナルドがいってたの!」
「え!ロナルドって留学生のあのイケメン!?」
聞こえた会話にドキリと胸がなった。
トド松くん、どう答えるんだろ?
ドキドキなる胸は何を期待しているのか。
そんな皮肉を思いながら、聞き耳はばっちり機能するから人間ってどうしようもない。
「そう?黒って重い気もするけど?」
それみたことか、案の定神様は素晴らしい天罰をくれる。
はあっとため息を吐いて、また下を向いたらこつんと背中にぶつかった。
「ごめんなさい」
あっ、ダメだ。
ちょっと泣いてしまいそう。
ぶつかった人は、誰だとかそんな事わかってる。
だって歩くのはいつも、彼の後ろ。
「でも、透ちゃんの黒髪は綺麗だよ?」
いきなりの一言に私は目を丸くする。
「あっ、たしかに!私も透の黒髪綺麗と思ってた!」
それに便乗して、他の二人まで私の髪を褒める。