第6章 私は食虫植物になりたい
朝日が眩しい。
カーテンからもれる光が私の瞼に重くのしかかる。
その重さに耐えきれずゆっくりと目を開けると、見知った天井が見えた。
「おはよう」
ふかふかのシングルベットの先に、いつもと変わらない日常があった。
「おはよう、トド松くん」
ベットのすぐ目の先にあるキッチンで、トッティこと松野トド松が朝食を作ってくれていた。
「もう、お寝坊さんだね?ふふっ、今日はエッグベネディクトだよ?」
ふあっとあくびを一つこぼして、ひたっとベットの下へ足を着けばピンク色のスリッパを足で探す。
ぺたりぺたりと小さな音をフローリングに響かせ、キッチンへと歩み寄る。
にこやかに笑う愛しい人、少し開いている窓からふく風が清々しい。
小さなテーブルに置かれたワンプレートの中身に目をやれば、カリカリのベーコンの香りと瑞々しいサラダ、朝の定番とでもいうようにエッグベネディクトのまわりを彩る。
「トド松くん...」
素敵な朝食を目の前にしても、今の私が欲しいのは彼の温もりだ。
ひたひたと彼に歩み寄り、ピンク色のエプロンを掴む。
「ふふっ?どうしたのー?」
柔らかい笑い声、エプロンを掴むだけでは足らない。
私はキッチンに向かう彼を後ろから抱きすくめた。
背中の温もりにすりっと頬をよせ、ただ当たり前にある幸せに胸を打つ。
トクトクと規則正しくなる音が、少々早くなり彼を求める。
背に顔を埋め目を閉じ、すうっと彼の匂いを肺に吸い込めばまた夢へと誘われる。
「もー!これじゃあ紅茶いれられないよ?」
ああきっと彼は今、可愛らしく頰っぺを膨らませているんだと思うと自然と口角があがった。