第8章 どうか無いものねだりでも

深く深く、一松くんの熱が私の膣内を焼く。

深く繋がれた嬉しさに思わず口角をあげる私は、イヤらしい女なんだろうか。
チリチリと焼かれる音が頭の中で燻る。

花をつむだけでは足りない。
花をもぐだけでは足りない。

ならいっそ燃やしてしまおう。

「...もう、しんないから」

投げ出していた両手を捕まれ、頭の上で縫い付けられた。
一松くんの手は少し冷めていてひんやりとしている。

けれど...。

「あっうっ、あつ、いよぉ...！」

爪先にまでまわらないほど集中して集まる血が、私の腟内にある一松くんに流れて身体を焼き尽くす。

「おっき...！ひゃあっ！んんっ！」

何も言わない一松くん。
けれど、その行為でわかる。

ゆっくりとした律動は速く。
心臓の鼓動もドクドクと脈打つ速度をあげ、壊れてしまうんじゃと心配になるほど彼は私を欲してくれてる。

水音が増す。
一松くんを受け入れる為だけに流す蜜液と、彼と繋がれた喜びに流す涙はどちらが尊いのだろう。

「もっと、おく、ちょ..うだ...んんっ！あああっ！」

高くなる声、もっともっとと言葉にならない言葉で叫び声をあげる。
自分の汚い欲にまみれた鳴き声の中、かすかに低い声がする。

「...透」

快楽に溺れていく視界に、一松くんをとらえた。
なんでそんな切なそうな顔をするのだろう。

「...一松く」

それを隠すためか、私に深い深いキスをおとして言葉を奪っていく。
同時に律動は激しく、私が壊れそうなほど強く奥を射抜く。

奥深くを射抜かれ、ビクビクと震えだす2人の身体。
私の中に自身を擦り付けるように深く深くはいって、ビクビクと一松くんは震える。

壁などなければよかったのにと考えてしまう私は、やはり無いものねだりのどうしようもない女だ。

一松くんはベットに落ちていき、私の瞼もまた眠りへと落ちていく。

「好きだよ」

耳にかすかに聴こえた言葉は、何年も何年も夢見た言葉だ。

「わたしも...」

どんなに愛しあってもけして言ってくれなかった言葉を何年越しで聴いているんだろ。

ただ、ただ、これ以上泣けないとばかりに大粒の涙が1粒すうっと頬をつたっていった。