白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18
第6章 変わるモノ変わらないモノ変われないモノ
及川さんの声に頷き
マンションの前で待ってみるけど
風が冷たく吹くばかり
『…ありがとう御座います
もう、帰ります
明日も仕事だし…』
立ち上がり頭を下げると
「…送るよ」
下げた頭を大きな手が撫でる
『大丈夫…です』
「一人で泣かせたくないんだよ
隠しててあげるから
タクシーの中で
いっぱい泣いて帰りな」
もうポタポタ落ちる涙を
拭いながら
「俺がフリーなうちは
胸でも腕でも
いくらでも貸してあげるから
一人で泣かないで…
クロちゃんと上手く行くように
俺も手を貸すからさ」
私を優しく抱き寄せる
フワリと香る匂いを
『上手くいかせる気あるなら
こういう事しないで…クダサイ』
押しのけて及川さんを睨むと
「…もう、ドキドキしては
くれないんだね
気付かないで欲しかったな
クロちゃんだけしか
愛せない事に…」
少し悲しそうに笑い
「行こうか」
私の背中をグッと押した