白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18
第6章 変わるモノ変わらないモノ変われないモノ
「お人好し。
俺が元凶なんだよ
ナナと間違ったのも俺
クロちゃんが居るって知りながら
キミを欲したのも
二人が壊れればと
クロちゃんを煽ったのも
別れる様に仕向けたくせに
仕事場には引き留めて
傷口に塩を塗り続けてるのも
…俺なんだよ」
大きな音が混ざり合う
カラオケボックスの中で
及川さんの声だけが
選ばれた様に私の耳に入って来る
「キミが欲しかった
どんな手を使っても
手に入れてしまえば
俺を見てくれるって
自信もあったんだ
…でも…」
そこまで話して
飲み物を喉に落として
大きな溜息を吐き出し
「キミだけを見てて気付いた
キミはクロちゃん以外
見る事はないって
どんな言葉を掛けても
例え俺が
今ある傷を癒せたとしても
心に刻まれた
クロちゃんへの想いは
消えないって」
悲しそうに微笑んだ
『…そんな事…』
"ナイ"と思ってるのに
声にならない
すれ違う廊下
一緒になるエレベーター
背中に感じる
微かな気配にさえ
ドキドキしてる