白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18
第5章 歪みに飲まれる愛
『鉄朗…』
「…そんな顔すんな
"大丈夫"って言えよ
じゃなきゃ、お前を解放出来ない
…お前がまた笑えるなら
別れる」
"別れる"
鉄朗と結ばれた時は
聞く事なんか
絶対ないと思ってた
私にとって世界で一番
悲しいセリフ
そのはずなのに
「笑えよ、泣くな…
必死に我慢してる俺の立場は
どうなるんで、すかァ?」
涙は止まらないのに
『…鉄朗…ごめんね…』
これで良いと思えるのが
悲しい
「姫凪が望むなら
俺は…それで良い
なぁ、会社辞めないよな?
俺の存在まで無かった事にしないよな?
つーか、俺のせいで姫凪が辞めたら
赤葦になんて言われるか
分かったもんじゃねぇしさ!」
下げた頭の上に
落ちて来る
ひたすら優しい声が痛い
嫌われるよりも
許される方が痛いけど
『…うん、辞め…ないよ』
それは私が背負わなきゃいけない
罪の痛さ
ここからは絶対
逃げちゃいけない
顔を合わせるのが
許されて笑いかけられるのが
どんなに嬉しくても
もう浮かれちゃイケナイ