白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18
第5章 歪みに飲まれる愛
私の言葉に
優しく笑いながら
頭を撫で
「タクシー拾ってあげる
送らないよ?
襲ったら困るから」
大きな背中を向けて前を歩く
「じゃあ明日、会社で
チャント来なよ
待ってるから…またね」
寄り添わない身体
あんなに親身だったのに
素っ気ない程
アッサリした別れ際に
会った時
あんなに張り巡らせてた
警戒の糸は見る影無く
消えている事を
私は気付かないまま
夜の街をタクシーに揺られた
一人の部屋に戻り
鏡を覗くと
お慰み程度に整った身なり
絡み付いた情事の後の香りと
微かに混ざる及川さんの香り…。
さすがにこのまま眠る気にはなれなくて
お風呂場に足を伸ばし
お湯を貼る準備をする
なんだか凄く疲れた
酷使した身体もだけど
決意を固めても
重い心を少しでも軽くしたくて
お湯に迷いを流したくて
熱めのお湯で
湯船を満たしていく
鉄朗とチャント話すのは
早い方が良いけど
私に出来る?
いや、やらないと始まらないけど…