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白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18

第5章 歪みに飲まれる愛


夢の中
私はまた愛欲に溺れてた
相手はぼやけてて
顔が見えない
声は鉄朗の様にも聞こえて
及川さんの様にも聞こえる

そんな悪夢から
無理矢理目覚めると
隣に鉄朗は居なくて
遠くからシャワーの水音だけが
聞こえる

いつもより長く
落ち続けるシャワーの音は
鉄朗の泣き声にも聞こえる

それは私のせい…
私が鉄朗を裏切ったから…

散らばった服に伸びる手
動く度に痛む下腹部に
顔を歪めながら
身なりを整える

消えないと。

鉄朗の顔を見たら
私の足は
また動かなくなる

許される言葉を待って
囁かれる愛に
甘えてしまうから

ソッと部屋を後にする
まだそこまで寒くないのに
繋がってない右手は
しんしんと冷えて痛む

殊更ゆっくり歩いているのは
期待してるから?
私の背中にぶつかる
温かい声をまだ
待ってるから?

『…逃げたくせに…
図々しいわよ、私…!』

パチンと頬を両手で打って
背筋を伸ばそうとするけど
丸まった臆病でズルい背中は
シャキッとしてくれず
足取りは重いままだ 
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