第5章 歪みに飲まれる愛

「…そう、か。
苦しめて…ゴメン…」

抱かれたかどうかの答えは
聞けなかったけど
もうそんなのどうでも良かった
姫凪を苦しめたくなかった

「…別れたら、笑えるんだよな？
もう、泣かないんだよな？」

『鉄朗…』

「…そんな顔すんな
"大丈夫"って言えよ
じゃなきゃ、お前を解放出来ない」

俺が出来る事全部するって
お前を泣かさないって決めたから

「…お前がまた笑えるなら
別れる」

これで…良い
なんて、思えるわけない
嫌だ、嫌だ、嫌だ！

ゴネる心に

『…鉄朗…ごめんね…』

姫凪の声がトドメを刺す

涙で濡れる顔が
少しホッとした様に見えて
俺の涙も瞼をノックする

ここで俺が
お前を諦め無かったら
駄々をこねたら

またお前が泣く気がして

「姫凪が望むなら
俺は…それで良い
なぁ、会社辞めないよな？
俺の存在まで無かった事にしないよな？
つーか、俺のせいで姫凪が辞めたら
赤葦になんて言われるか
分かったもんじゃねぇしさ！」

必死に強がって笑った