白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18
第5章 歪みに飲まれる愛
でも、俺の不安は
「…心配しないよりは
良いかもね
ゴールが近ければ近い程
人は前しか見なくなって
周りが見えなくなるからさ」
返ってきた
当たり障りない言葉に
有耶無耶になる
「…周り、ね。
注意しとく…
てゆっか、女っ気ねぇなー
姫凪にもう一回
電話してみるかな~
あ、研磨の所の
あの秘書チャンは?
今日はもう帰したのか?」
「…時間外労働はさせない主義。
姫凪呼んだら来るんじゃない?
どうせ、会えないは
言い過ぎたかな、とか
でも今更会いたいとか言えないしなとか
思ってるって」
「まじ?!
じゃあ、電話掛けてくる!」
透き通るほどホワイト企業感を出す
研磨に乗せられ
携帯を鳴らすと
〈あ、鉄朗…!ごめんね!
あの…会えないって言ったのは
少し身体辛かったからで…
後…ヤキモチも妬いてたからで…〉
俺が名乗るより早く
必死な姫凪の声が聞こえる
これは、アレですなァ。
呼び出したくなくなる
この可愛い生き物を
今すぐ独り占めにしたくなるヤツ。