白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18
第5章 歪みに飲まれる愛
「へー?」
気のない返事をしつつも
腹の中は
モヤモヤとドロドロで
溢れてしまってる
「布施さんの話より
もっと楽しい話しません?
今日のランチ
一緒にどうですか?」
密度の高い電車の中
甘えた声が
胸板にぶつかる
「あぁ…ありがたいけど
ランチは同じ課の連中とって
決めてるからさ
ほら、もう着くから
気を付けて出ないさいよ」
軽くいなして
スマートに
出口まで運び
「俺、トイレ寄るから
また後でな」
バイバイと手を振り
隣の車両から降りてくる
姫凪の姿を探す
「姫凪!」
人並みに押し潰されながら
降りて来た
小さい身体を引き寄せると
『…おはようございます…
あの子は?』
俯いたまま
弱々しく俺の身体を押し返す
ホームで人目があるからとか
さっきの子に見られたらとか
思い当たる理由は
いくつもあるのに
「先に行かせた
姫凪…ちょっと来いよ
後一本分くらい
平気だろ」
そのどれも違う気がして
姫凪を物陰に引き込む