白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18
第4章 消せない昔、消えない今(後)
"私のも高い物じゃない
むしろ安物…"とか続けようとした
声にかぶるように
「嬉しかったんだよ
姫凪ちゃんの優しさが
あの時はありがとうね
助かったよ」
及川さんが優しく笑う
なによ。
あんな事しておいて
なんでそんな顔するの?
紳士ぶっても
良い人だなんて
思わないんだから…
「そろそろ行くよ
次はいつか分からないけど
コッチ来た時はまたコーヒー淹れてよ
今度は宮城のお土産
買って来てあげる
皆で食べよう
じゃあねー」
少年みたいな顔して
私に触れる事も
振り返る事もなく
去って行く及川さん
「姫凪ー?
どうした?気分悪くなったか?」
それと入れ替わりに
鉄朗が私を心配して
探しに来てくれた
『大丈夫だよ
ごめんね、遅くなって
どこに行くか決まった?』
なんとか気持ちを切り替えて
鉄朗を見上げて笑顔を作る
「木兎はカラオケしたいとか
行ってるけど…」
『あぁ、うんカラオケねオッケー』
いつも通りにしようと
笑顔のまま応えてから
"しまった"と思った