白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18
第4章 消せない昔、消えない今(後)
勢い良く顔を上げると
そこには及川さんの姿
『…及川さんも
お手洗いですか?』
なるべく冷静にと心掛けて
言葉を吐き出すけど
頭も心もパニック状態
記憶の奥底に
仕舞い込んでしまおうとした記憶が
次から次へ
「ううん、違うよ
姫凪ちゃんと話したかったから
追ってきちゃったよ」
低く甘い声で引き摺り出されてしまう
忘れるって決めたんだ
揺れちゃ駄目
揺れてる事も悟られちゃ駄目
シッカリしないと…
『…私は、話したくないです
鉄朗が待ってますから
…戻ります』
必死にいつも通りを装うけど
私のペースなんか
「待ちなって」
『嫌です』
「俺だって嫌だよ
話すだけじゃん?
何が駄目なのさ
もしかして…
意識してるのかい、俺の事」
『そんなわけないでしょ!』
「じゃあ、良いじゃん
何を焦ってるのさ
チョットだけ話そうよ」
呆気なく崩されてしまう
『…アナタと話す事が
無いんです!
話したくないの!
鉄朗の所に行きたいの!
…あ、すいません』