白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18
第3章 消せない昔、消えない今(前)
するとそこには
「出て来てくれると思ってた
…行ってきます」
いつもと同じ笑顔で
私に手を伸ばす鉄朗野の姿
『いってらっしゃ…ンんっ!?』
「…キス、したかった…
姫凪…愛してる」
濃厚なキスを送るくせに
子供みたいな顔して笑う顔に
跳ねては痛む胸
『私も、愛してる…
いってらっしゃい』
なんとか声を絞り出すものの
ドアが閉まった途端
蹲り動けない
溢れる涙で窒息しそうになる
私はさっき重ねたこの唇を
昨日及川さんと…
忘れるなんて出来ない
そんなに罪は軽くない
最初の夜も昨日の夜も
全て許されないよ…
いつ以来だろう
苦しくて辛くて
でも気を失う事も出来なくて
意識朦朧になりながらも
苦しさでまた現実に
引き戻された私を救ったのは
「姫凪、落ち着いて」
あの時と同じ声
『研磨…くん…』
「とりあえずチョット大人しくしてて?」
フワリと浮いた身体は
寝室じゃなく
リビングのソファーに運ばれ
片付け切れてない物の中から
紙袋を渡され
ユックリ息をするように促される