• テキストサイズ

白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18

第3章 消せない昔、消えない今(前)


「…帰るよ、ゴメン」

「及川サン?」

「頭冷しながら帰りたいから
送らなくて良い
あ、これ姫凪ちゃんに渡してくれる?
初日に服汚してさ
綺麗にしてもらったから
その御礼…って安物のハンカチだけど」

潰れたタバコを灰皿に投げ入れ
密かに買っておいた御礼を
孤爪チャンに押し付ける
紙袋の底に
そっと電話番号とメッセージを書いた
あの紙を忍ばせて

「お邪魔しました」

席を立ち重い荷物の入った
鞄を引き摺るように家を出る

姫凪ちゃんを想うなら
芽ばえた気持ちは摘み取って
忘れるのがきっと一番正しくて
何食わぬ顔して
ただの知り合いのフリして
仲間を演じるのが
それが一番簡単なのに
俺以外誰も傷付かない
姫凪ちゃんを傷付けない
唯一の方法なのに…

忘れ
……たくないよ
忘れられないよ

こんなに好きな気持ちも
こんなに苦しい気持ちも

初めてなんだ

忘れる方法が探せない
気付いたらキミを
手に入れる方法を探してる
/ 1242ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp