第3章 消せない昔、消えない今（前）

声にならない言葉
怖くて塞いだ耳

『…会いたくないなんて言わない
さっきは…パニックになっただけ
ゴメン……』

あんな目に合わせたのに
謝らせた事が
更に俺に深くぶっ刺さり
抜けない棘になる

「姫凪ちゃんは
悪くねぇって
だから謝んなよ
優しくされると
また勘違いしちゃいますぅ」

この優しい子を
愛しいこの子を
傷付けちゃイケナイ
もう絶対傷付けない

『勘違いって…
待って、クロ…』

必死にフォローする顔も
"違う"と首を振る仕草も愛しい
愛し過ぎて怖くなる

「反応しないってのは
そこまで気持ちがいってないって
事なんだと思う
それなのにあんな事して
マジでゴメンな？
またイチから頑張るからさ
友達で居よう」

自分の愛の重さが
この子を潰してしまいそうで。

姫凪ちゃんが言うように
本当に勘違いじゃないなら
きっと上手く行ってたんだ
心も身体も重なって
あんな苦しい想いなんか
させやしなかった

『クロ…』

ゴメンじゃきっと足りないよな