第3章 消せない昔、消えない今（前）

「…うん、わかった。
焦らせ過ぎたね
クロと姫凪に
早く幸せになって欲しくて…
おれのミスだ、ゴメン…ね？」

研磨のせいじゃない
姫凪ちゃんのせいでもない

俺のせいだ。

姫凪ちゃんの身体が
反応しなかったのも
姫凪ちゃんの心が
元彼（アイツ）と俺を重ねて
拒否ったのも

俺が悪いんだ。

フラフラと立ち上がり
キッチンに辿り着くも
動けない俺の背中に

『クロ…』

姫凪ちゃんの声がぶつかる

なんで来た？
まさか別れを告げに？

姫凪ちゃんの唇から紡がれる言葉が
サヨナラだと勝手に反応した脳が

『あのね、私…』
「さっきはゴメン！
もうしない
二人切りになろうとも誘わない
だから…居なくならないで欲しい…
どうかしてただけだから
もう…しねぇから…！」

姫凪ちゃんの声を遮り
頭を下げる

『待って…よ』

「しばらく会いたくないって言うなら
我慢もする
電話もLINEも…
だから…」

サヨナラなんて言わないで？