白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18
第3章 消せない昔、消えない今(前)
頭の整理をしなくちゃと
深呼吸を繰り返す俺の耳に
部屋の中の声が
薄っすら聞こえて来る
「ごめん。
おれ帰らなきゃ良かったね
ダイジョブ?姫凪」
『…うん、平気…』
「…はぁ。
おれが聞いといてだけど
平気なわけないよね
どうしたの?
クロの事…イヤだった?」
会話の内容に
耳がピクリと動く
『…イヤとかじゃなくて…』
姫凪ちゃんの声に
ホッとしたのも束の間
『クロはクロなのに
チャントしないとって
思うのに…先輩を思い出して…
頭の中…パニックに
なっちゃって…』
涙に塗れた苦しそうなセリフに
胸が締め付けられて行く
「似てたの?
クロはあんな酷い事しないよ?
ちょっと暴走して盛っちゃったけどさ」
研磨のフォローはありがたかった
でも…俺らが思うより
『…キスされても
触られても
私…の身体…反応しなかった…
先輩の時と同じ…で…
だから余計にクロと先輩が
重なって…怖くて…』
姫凪ちゃんの傷は深くて
その傷を俺は自分のエゴだけで
思いっ切り抉ってしまってた