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白昼夢第4幕【月桃模様ーさんにんもようー】黒尾✖及川 ®18

第3章 消せない昔、消えない今(前)


「…元気…に、なって来た?」

少し背中を丸めながら
頭を撫でて話し掛けると

『は、はい!
もう全然余裕…で…』

大きく身体が跳ねて
苦しそうに声が詰まる

それのどこが余裕なんだよ
俺の手でそんなにビクビクして
話すのも辛そうで
傷付けられるのを恐がってるのが
触れた所から
痛いくらい伝わってくる

"なに無理してるんだ"
"俺が癒やす"
そんな言葉は容易に頭に
浮かんで来るのに
そうしたい気持ちは溢れてるのに

「そっか!元気になって良かったなァ」

強気に行けない
手を差し伸べられない

『はい、なので大丈夫です
じゃあ…移動教室なので…行き、ます』

ビビってるのは姫凪ちゃんだけじゃない
俺もビビってる
姫凪ちゃんの拒絶を
差し伸べた手に怯えて苦しむ姿を見るのが
怖くて

「おぅ、じゃあな~」

足踏みを繰り返してる

すれ違い様に香る香りに
アイツの匂いは混ざってなくて
もう上書きもされないのに

絡み付ける事も
香り移す事も出来ず
開いていく距離
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